「水はタダ」から「おいしい水は買うもの」という時代へ
安全と水はタダって?
私が子供のころ、1980年代までは「水を買う」という人はほとんどいなかったと思います。
「蛇口をひねればいくらでも出る水をなぜわざわざ買うのか?」という意識が普通の時代です。
日本人特有の意識を象徴する言葉として「安全と水はタダ」という言葉を聞かれたことはありませんか?
これは海外では「安全も水もお金を出して買うもの」で、日本人が海外へ行く際には「安全と水はタダ」という意識は捨てなくてはならないとよく言われたものです。
要するに、海外へ渡航する際には保険に加入し、現地で生水、水道水を口にしてはならないということですね。
海外旅行が身近になった今ではもう当たり前の話かもしれませんが、80年代ころまではこんな話をよく聞いたものです。
世界的にもおいしいと評判だった日本の水道水
ヨーロッパの水は土壌の影響もあり、ミネラル分が豊富に過ぎるため、飲みやすくおいしい水かというと必ずしもそうとは言えないようです。
例えば、英国のロンドンでは水道水をやかんで日常的に沸かしていると、やかんの内側にミネラル分の結晶が白く大量に付着するほどです。
こうしたこともあり、欧米諸国ではミネラルウォーターが普通に売られるようになったのですが、日本の水道水は衛生面でも高品質で軟水で口当たりもいいことから、長年「水はタダ」という感覚が普通でした。
日本の水はもともと世界的にみても良質な水として有名でした。
事実、外国船が神戸港や横浜港に寄港した際には大量に水を搭載しますが、 「赤道を越えてもおいしく飲めるコウベウォーター、ヨコハマウォーター」とされているほどです。
これは日本の水が軟水であるために人間が口にして口当たりがよくて飲みやすく、味も安定しているということから言われる話です。
ミネラルウォーターの元祖
そんな恵まれた水事情にあった日本でも、実はミネラルウォーターの歴史は意外に古く、誕生は約80年前にさかのぼります。
国産のミネラルウォーターといえば「富士ミネラルウォーター」をご存知の方もいるでしょう。
製造元は昭和4年に日本ではじめてミネラルウォーターを発売した「堀内合名会社」で当時はミネラルウォーターはホテルや特急列車内の食堂車で扱いがある程度。
昭和初期の西洋式のホテルの客や特急列車の乗客というのはまさに上流階級の人たちばかりです。
当然、ミネラルウォーターもこうした上流階級の人たちのテーブルドリンクに限られていました。