「水はタダ」から「おいしい水は買うもの」という時代へ

飲食店等の業務用での普及

飲食店

戦後の混乱期を経て、高度成長期に国民の所得は飛躍的に増え、日本人の生活は豊かになりました。

外食産業の市場拡大に伴って、ミネラルウォーターは飲食店、おもにバーやキャバレーといった業態での酒類の水割り用として販売需要が拡大します。

折からのウイスキーの水割りブームもあり、サントリーやニッカウイスキーといった酒類メーカーが主にウイスキーの水割りでの需要を想定して、瓶詰めのミネラルウォーターを業務用として販売を始めました。

しかし、このころはまだそもそもペットボトルというものが無く、瓶入りのミネラルウォーターです。

たとえ水道水であっても良質な水が蛇口をひねるだけで気軽に飲める日本では、まだまだミネラルウォーター自体が日常生活での飲料水という位置づけにはありませんでした。

ミネラルウォーターはそのまま飲むものではなく、あくまでお酒の味を邪魔しない酒類の割水としての利用がほとんどでした。

一般の人にとってのミネラルウォーターとは、カンパンや缶詰等と同じく防災災害用品の一部であり、災害時の非常用の飲み水として考えられ、長期保存が可能なように缶詰のようなスチール缶に入ったものや、ポリ容器に入った非常用の飲料水が防災用品コーナーに並んでいるような状態でした。

一般家庭へのミネラルウォーターの普及

六甲のおいしい水

一般家庭向けのミネラルウォーターとしていえば昭和58年発売のハウス食品の「六甲のおいしい水」。

当時のハウス食品の社長が海外ではたくさんの人が水を買っているのだから、いずれ日本にもそういう時代が来るだろうと考えて、ミネラルウォーターの販売を考えたそうです。

ハウス食品といえばカレーの会社、「カレーの会社がなぜミネラルウォーター?」「カレーといえばお水を飲むからか?」という事や、スーパーなどのカレーの陳列棚の横に六甲のおいしい水が並んでいることも多かったことから、そんな風に考える人も多かったようです。

その後、大々的なCM戦略で一般家庭向けに認知度を上げて一気にシェアを拡大しました。

当時、時代劇などで活躍中の中村吉右衛門さんがおいしそうに六甲のおいしい水を飲むCMが印象的でした。

ミネラルウォーターが一般家庭に普及したのは、この六甲のおいしい水の大々的なCM戦略によるものと考えていいでしょう。

ミネラルウォーター市場の拡大

安曇山水

ハウス食品の六甲のおいしい水の家庭への普及を受けて、酒類メーカーも一般家庭向けのミネラルウォーター事業に相次いで参入します。

1989年にはそれまで業務用のみであったサントリーが一般家庭用向けに「山崎の天然水」と「南アルプスの天然水」を販売開始しました。

キリンビール(現キリンビバレッジ)も「安曇山水」を発売し、一般家庭用向けのミネラルウォーター市場での販売合戦が始まりました。

輸入のミネラルウォーターもファッション性を全面に出したイメージ広告によるブランディングが時代の流れにマッチし、若者層を中心に普及が進みました。

その後、大手の飲料メーカーだけでなく、採水地の地元企業による天然水事業も広がりを見せ、現在ではスーパーや量販店では国内各地の名水をボトリングしたもの、健康志向にマッチした機能水、また比較的ミネラル分の多い海洋深層水なども発売され、ミネラルウォーター市場は急拡大し、現在も市場の拡大は続いています。

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